どうも、アベケン(@abekenblog)です。
最近論文を色々読み込んで知見を深掘りしようとしていて、気になるトピックの論文があったのでレビューをしてみたいと思います。
少し前にSNS等で紹介されていた論文で気にはなっていたのですがなかなか読み込む気力と時間がなかったので今更感がハンパないのですが、自分の頭の整理と備忘録を兼ねて記事にしてみます。
論文の内容
研究プロトコル
18人の国際レベルのロード選手及びクロスカントリーMTB選手が被験者として研究に参加した。
被験者はVO2maxに基づき2つのグループに分けられ、それぞれ異なるプロトコルを実施した。
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Long Interval(LI)群
5分の高強度を4回実施。高強度間のリカバリは2.5分。
Short Interval(SI)群
30秒の高強度と15秒のリカバリを合計9.5分行う(高強度を13回実施)のを1セットとして3セット実施、セット間のインターバルは3分とした。
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上記プロトコルは3週間、週に3回実施され、高強度時の強度は可能な限り高い平均出力になるよう指示された。またリカバリにおける強度は高強度の50%とした。
高強度滞在時間のトータル時間をLI群で20分、SI群で19.5分と同等になるよう調整した。リカバリ時間はLI群で7.5分、SI群で15分だった。
各インターバルの間にボルグスケール(20段階で主観的な辛さを表現する指標)にて主観運動強度をヒアリングした。
結果
・VO2maxテストのラスト1分の平均出力をWmaxとして定めた時、SI群でWmaxは有意に増加した。
・20分の平均出力がSI群で優位に増加した。
・心拍数や主観運動強度(RPE)は両群で同程度であった。
考察
この論文は解釈の仕方によって捉え方が色々でてきそうな内容だと思います。後結構ツッコミどころが多い…。
主だった結果から「パフォーマンス改善にはSI一択!」となるのはちょっと気が早いんじゃないか?というのが現時点での感想です。
高強度の滞在時間を合わせているけどリカバリの時間に倍の開きがある
なんでリカバリの時間を合わせなかったのか…。インターバルトレーニングにおいてリカバリの時間は重要な変数のうちのひとつです。リカバリ時間が不十分なためにLI群において高強度の強度が下がってしまった、主観運用強度が上がってしまった結果、パフォーマンス向上に必要な刺激が得られなかった可能性は十分考えられます。
ましてや対象の被験者はエリートサイクリストなので、パフォーマンスを向上させるためには強度の高い刺激が必要であったことが推測されます。
無酸素運動能力が考慮されていない
インターバル運動、それも高強度のインターバル運動においては有酸素運用能力を改善させるために無酸素領域で運動する必要があります。無酸素能力が弱い選手はインターバルにおいて同じ強度で運動していても相対的な強度が高いため、RPEが高く認識されてしまった可能性があります。
また、被験者が18名と少なく、無酸素能力の高い選手が偏ったグループに割り当てられてしまった可能性を排除できません。
心因的な要因を排除できない
これは著者が本文内でも述べていますが、強度設定がすべて主観運動強度のため心理的な要因を排除できていません。
例えばマラソンや持久走の大会で走っていたと仮定して、「もう限界だ!もう無理!」と思っていてもゴールまであと50m!横には普段仲良しの友達が今まさに自分を抜こうとしている!といった状況の場合、今まで以上の強度で走れたりダッシュできちゃったりします。少なからずそういった経験がある人は多いんじゃないかと思います。
2つのグループの指標を心拍数とRPEで揃えているので、「本人の辛さが全く同等だったか?」とはなかなか言えません。あくまでも自己申告だし、自分の辛さを正確に把握できてるかどうか?なんて本人にしか(もしかしたら本人でさえも)わかっていない場合があります。
心拍数においても個人差が大きいので、数字だけをそろえてもあまり意味がありません。
まとめ
この研修内容から「Long IntervalよりShort Intervalの方が効果的」とはなかなか言いづらいです。
また、対象が最大酸素摂取量がかなり高いエリートサイクリストが対象なので、一般アマチュアサイクリストに対しては同じ効果があるかどうかはわかりません。
そもそも週に3回このインターバルを実施するだけでもかなり体力を必要とするはずです。
これはLong IntervalとShort Intervalを自分なりにやってみた感想ですが、Short Intervalは強度の割に体感強度が低く、メニューをこなせる割合が高いように感じます。(ひょっとしたら強度設定が間違っている可能性もありますが…)
対してLong Intervalは体感的に辛い時間が長く、体調万全にしないとメニューを全てこなせなかったりする割合が高いです。
そういった意味ではShort IntervalはLong Intervalよりも取り組みやすい形のプロトコルであり、この論文はShort Interval形式のプロトコルでもパフォーマンス向上は見込めるという示唆を補強する材料にはなりそうです。
※編集後記※
少し前からローラーに乗ると右膝が痛むようになってしまい、しばらく自転車に乗れていません。
今まで自転車に乗るために使っていた時間を別の有意義なことに使おうと思っているんですが、ダラダラしてしまいがちです。ゲームって楽しいなぁ(現実逃避)