どうも、アベケン(@abekenblog)です。
このブログで取り上げるのはトレーニングの内容や筋トレといった内容が多く、あまり自転車の機材に関しては取り上げてきませんでした。
自転車は機材スポーツの側面もあるので、今回は(珍しく)パフォーマンスに影響があるであろう、機材に関して記事を作成したいと思います。
とはいえ素材の良し悪しや製品の精度といった内容では多くを語る術を持たないので、今回は最適なクランクアームの長さを物理学やバイオメカニクスの方面から深掘りしてみたいと思います。
前提
自転車を進めるためにはクランクを回す必要がありますが、クランクを回すために自転車にはクランクアームが付いていて、クランクアームの先にペダルが付いており、ペダルを漕ぐことでクランクが回転し、クランクのギアに付いているチェーンを介して後輪が回転することで推進力を得ています。
この推進力はパワーと表現することができ、W(ワット)で表示されます。パワーメーターを使用している人であればおなじみの表記です。
このパワーは、ペダルを介してクランクアームにかけられる力(トルク)と、クランクアームの回転数(ケイデンス)によって決まります。
パワー = トルク × ケイデンス
トルクをかけられなくても、ケイデンスを上げればパワーは上がります。
逆にケイデンスが上げられなくても、より強いトルクをかけることでパワーは上がります。
究極的な理想はトルクとケイデンスを両立し、「すごく重いギアを高回転でブン回す」ことですが、疲労のために維持時間が極端に短くなるので多用はできません。
自転車は「持久系スポーツ」と分類されている通り、他のスポーツと比較すると競技時間が長めです。
そのため長時間維持が可能なバランスが必要になってきます。
クランクアームの長さが変わるとどうなるか?(物理編)
クランクとクランクアームはてこの原理を利用しています。
クランクの中心を支点として、ペダルが力点となり、円周のチェーンを引っ張ります。
てこということは、支点に対して力点が遠ければ遠いほど少ないトルクで同じ力を加えることができます。
逆に、クランクアームが短い場合は支点と力点が近くなるため、同じ力を加える時により多くのトルクが必要になります。
例えば、100というパワーを出す時、クランクアームの長さが20であればトルクは5でOKだとすると、クランクアームの長さが10の場合、10のトルクが必要になります(数字はテキトーです)
より多くのトルクが必要ということは脚はより強くペダルを踏まなければなりません。
そうなった場合、長時間強くペダルを踏むためにはより強い筋力と、その強い筋力を維持する筋持久力が必要になってきます。
じゃあクランクアームは長い方がいいのか?というと一概にそうとは言い切れません。クランクアームが短いことによる利点はあります。
それは、「脚を動かす範囲が小さくなる」ということです。
上の図はクランクアームの長さを変えた2つのクランクを表しています。赤い円が脚の軌道です。
クランクの長さによって脚を動かす範囲、すなわち円周が変わります。当然ですがクランクアームが長い方と比較すると、クランクアームが短い方が円周が小さくなります。
ペダルはクランクアームの先端に付いているため、円周に沿って脚を動かすことになります。そのため、クランクアームが短い方が移動距離が短く、ケイデンスを上げやすくなります。
そのため、クランクアームの長短には一長一短ありそうです(シャレじゃないですよ!!!)一概に短い方がいい!長い方がいい!とは言い難いなぁという印象です。
クランクアームの長さが変わるとどうなるか?(バイオメカニクス編)
ではバイオメカニクスの観点からはどうでしょうか?
バイオメカニクスとは生物の構造や運動を力学的に考えたりする学問の総称です。
ここでは、人間がクランクアームの先についているペダルを漕いでクランクを回す時に身体が発揮する力の強さや方向、他にも疲労といった観点から考察していきたいと思います。
物理編でも書きましたが、クランクアームが短いとクランクアームの円周が小さくなります。
円周が小さいということは脚を動かす範囲が小さくなります。
脚を含めて身体を動かす範囲が小さいということはエネルギー効率が良く、疲労が少なくなります。
逆にクランクアームが長くなると大きく脚を動かす必要が出てくるため、エネルギー効率と疲労の問題が出てきます。
また、ポジションの問題も出てきます。
円周が大きくなると円周の上死点と下死点(円の12時方向と6時方向)の差が大きくなります。
自転車の構造上、脚とペダルは円周のどの位置にいても連動して動かざるを得ないため、下死点まで脚を届かせようとすると、そのためにサドルを下げざるを得ません。
そしてサドルを下げると今度は上死点が問題になってきます。
クランクの円周が大きい状態でサドルを下げると上死点がより身体に近くなります。そうすると脚が上死点付近を通過する時、膝の角度がより小さくなります。
膝の角度が小さくなるということは膝と股関節の高さが近くなると同義です。股関節をより深く曲げる形となります。
股関節は深く曲げた状態と浅く曲げた状態を比較すると、浅く曲げた状態の方が力が発揮しやすくなります。
例えば、スクワットを行う時をイメージします。
同じ重さのバーベルを持った時、膝をちょっとしか曲げないスクワットとふくらはぎと太ももの裏が付くまで曲げるスクワット、どちらがキツいでしょうか。
実際にスクワットをやってみるとわかりますが、ふくらはぎと太ももの裏が付くまで曲げるスクワットの方がキツいです。
そのため、円周が小さい方が全体的に力を発揮しやすいということになります。
そのため、バイオメカニクス的にはクランクアームが短い方が良さそうです。
注意点
じゃあ物理的観点とバイオメカニクス観点を総合するとクランクアームは短ければ短いほどいいのか?というとそうではありません。
物理編で書きましたが、クランクアームが短い場合はより強いトルクを必要とします。より強いトルクを発揮するにはより強い筋力を必要とします。
筋力が不足した状態で短いクランクアームを使用してもケガをしたり、ケイデンスが極端に低くなったりするので、必要な筋力をつけるためにウェイトトレーニングを行ったりする必要が出てきます。
そして自転車で走る道路は平坦道だけではありません。上りや下りもあります。
特に上りではより大きなトルクを必要とするため、平坦ではちょうどよいクランクアームの長さでも上りでは短すぎる…といったことも起こり得ます(ギア比を変えればいいじゃないという意見もありますが、それにも当然限界はあります)。
また、人の身体の特徴として「特異性の原則」があります。
これは「特定の動作を繰り返すことで、その動作を行うことに適応していく」という意味です(この言葉には色々な解釈がありますが、私はこう解釈しています)。
要は、「人は特定の動作(ここではペダリング)を繰り返すことで、その動作に慣れていき、動作をより効率的に行えるようになっていく」ということです。
長めのクランクアームを使用すると動きが大きくなりエネルギー効率が悪く、力発揮がしにくい場合があると書きました。
しかし長めのクランクアームを使用し続けることでその動きに慣れていき、他人から見たら「非効率だなぁ」と思えるような動作でも当人にとっては「効率的な動き」になる可能性があります。
その結果、長めのクランクアームを使って少ない力で効率的にペダリングを行える可能性もゼロではありません。
また、今回は考察を単純化するためにクランクアームの長さにフォーカスを当てて考察しましたが、サドルの高さやハンドルポジション等、自転車に乗る人の体組成(各骨格の長さや比率等)も深く関わってきます。そのため他の要素が関わって来た時に今回の内容がそのまま当てはまらない場合もあります。
まとめ
クランクアームの長さは、物理的には良し悪しがあり、バイオメカニクス的には短めの方が有利に働く場面が多そうだけど、長めのクランクアームに適応する可能性もゼロではない、という内容でした。
ちょっと長めの内容になってしまいました…。
結局は使い慣れた長さのクランクアームを使い続けるのが1番なのかもしれませんね!
※編集後記※
腰痛が治らず病院に行ってレントゲンを撮ってきました。
骨には異常がなさそうで一安心です。
股関節周りのストレッチをすると症状が和らぐのでケツあたりが硬くなってそうだなという仮説のもと、ストレッチやらマッサージやらを試してみようと思います。
やっぱりデスクワークは身体に良くないですね…。